『囁きの小径』(1926)

『囁きの小径』(1926)

無声映画伴奏

2025年8月5日

水曜日

/ 7:00 pm

(EST)

at ニューヨーク近代美術館 (MoMA)

/ 11 West 53rd Street, New York, NY 10019

  • Event Overview:
    今年で3年目を迎えるニューヨーク近代美術館(MoMA)の『サイレント・ムービー・ウィーク2025』。7夜連続で、近年修復された無声映画7作品を特集上映する。

  • 囁きの小径』(1926年/アメリカ)
    監督:ジョン・M・スタール
    出演:エレノア・ボードマン、コンラッド・ネイジェル、ウィリアム・ヘインズ、ジョン・ステップリング/70分

    ジョン・M・ストールによる繊細な結婚ドラマ。本作は、一見シンプルな筋立て――かつての恋人への未練を断ち切れない新妻――を通して、恋愛関係における心理的な複雑さを見事に描き出している。主人公メアリーを演じるエレノア・ボードマンは、かつての恋人(ウィリアム・ヘインズ)と偶然再会し、献身的だが平凡な夫ジミー(コンラッド・ネーゲル)との結婚生活が揺らいでいく様子を、驚くほど繊細な演技で体現している。

    のちに『バック・ストリート』など、プレコード期の傑作群で女性の欲望を掘り下げていくことになるストールは、本作においても家庭内の何気ないディテールと雄弁な視覚構成によって、登場人物の内面を浮かび上がらせる手腕をすでに発揮している。物語は安易な道徳判断を下すことを避け、初恋の残した余韻に敬意を払いながらも、成熟した関係がもたらす穏やかな幸福を見つめている。

    恋愛への揺れやためらいを知的に描くこの作品は、ストールの後の作風を予感させると同時に、結婚や欲望といったテーマに独自の視点で向き合うアメリカ映画界における彼の存在を強く印象づける一作である。