MoMAの無声映画プログラム、有観客にて再開!
MoMA(ニューヨーク現代美術館)の無声映画プログラムが今月から有観客にて再開されます。再開にあたり、ほぼ一ヶ月に渡って上映されるのは『Biograph/Edison: Restorations and Rediscoveries from the Collection』。これは、元々は昨年3月に企画されていたもので、コロナ禍によりMoMAが閉鎖されることになり、上映もシリーズ途中で打ち切られたのですが、その打ち切り前最終日の上映伴奏を担当していたのが私でした。
その3月は、全部で15本の上映伴奏を担当する予定になっていました。6本目となる3月12日18時半からの上映を無事弾き終えて帰宅し、翌13日、MoMAが閉鎖を決定。残りの9本の上映もすべてキャンセルになり、22日からはNY州全体がロックダウンに入るという未曾有の状況に。
それから18ヶ月後、最後にお客様の前で演奏したのと同じ場所で、また演奏を再開できることをとても嬉しく思います。昨年3月12日の終演後にピアノの蓋を閉めた時には、まさかその後こんなに長い間演奏ができなくなるとは思ってもみませんでした。今回、こうして、同じ場所で同じプログラムを弾けることになり、あの3月からずっと「一時停止」状態だったものが、街としても個人としても解除され、ようやくその「続き」を始められる気がしています。
無声映画に即興演奏で生伴奏を付けるというのは大変特殊な演奏形態です。ピアニストを照らすスポットライトは無く、客電が落ちた暗闇の中、観客の皆さんと一緒に映画を鑑賞しながら、映画に導かれるように音楽を紡ぎ出して行く。たとえ同じ映画でも、観客や劇場が違えば、紡ぎ出される音楽もまた違うものになります。観客の皆さんの存在も即興演奏の一要素であり、その日そこで生まれた音楽と映画の融合は一期一会、その時その場にいた人だけが分かち合えるもの。今月のMoMAで、久しぶりにこの体験ができることを本当に楽しみにしています。
今月のMoMAでは、8本の上映伴奏を担当します。私が師と仰ぐ大ベテランの無声映画伴奏者のお二人、Donald SosinさんとBen Modelさんが伴奏される日もあり、このお二人と一緒にご指名をいただけたことを本当に嬉しく、光栄に思います。担当伴奏者を含めた上映スケジュールはこちらからご覧になれます。もしNYにいらしてお時間がおありでしたら、是非、生伴奏付きの無声映画を観にいらして下さい!